
江古田
分銅パン屋(量り売り)パンの量り売り 分銅値段と量の、どちらかは必ず動きます。
Photo: Andy Li / Unsplash
写真は実在するパン屋の売り場で、分銅の店内ではありません。壁に読める英語の由来書きと署名は、その店を始めた方のもので、うちとは何の関係もありません。籠に並んでいるパンも品書きの品ではなく、ケースの値札も、そこに書いてある通貨も、白い帽子の方も、その店のものです。それから ── 写っているのは、籠から一つ取って札の値段で買う売り場です。うちがやらないほうのやりかたが写っています。そして画面のどこにも秤がありません。うちの売り場でいちばん大事な道具は、この一枚に一度も写っていません。ガラスの手前に見えるアレルギーの掲示も、その店の掲示です。うちの掲示は下の「刃物のこと」にあります。
江古田。大きいパンだけを焼いて、ご注文のぶんだけ切り、秤に載せて売ります。値段は 100g いくらで掲示してありますが、一つあたりの値段はどこにも書いてありません ── 包丁は狙ったところに落ちないので、値段は切ってから秤が出します。300g とおっしゃっても 300g にはなりません。そのかわり、お渡しするのは秤に出た重さそのものです。
- 掲示している単価は税込です。お会計は「表示された重さ × 単価」で、1円未満は切り捨てます。
- 秤はお客さま側にも数字が出ます。うちの側だけで読んだ数字でお会計はしません。
- 秤の目量は 5g です。283g のパンは 285g と表示されます。
- 予算でおっしゃっていただいた場合は、超えないよう必ず少なめに切ります。
- 一本の終わり(端)も同じ単価です。安くはなりません。
秤
何グラムと言っても、何グラムになるかは決まりません
カウンターの向こうで実際に答えていることを、そのまま置いた装置です。品と、ご注文のしかたを選ぶと、秤に出る重さと、その重さから出るお会計を答えます ── ただし、どちらも幅で答えます。一つの数字は出しません。まだ切っていないので、どこにも無いからです。
品と、ご注文のしかたを選んでください。出るのは幅です。一つの数字は出ません ── まだ切っていないので、どこにも無いからです。
「¥500くらいで」とおっしゃっていただいてもかまいません。そのときだけ、うちは外す向きを選べます ── 予算を超えないよう、必ず少なめに切ります。
カンパーニュ/量り売り
秤に出る重さ
275〜325g
お会計
¥269〜¥318(100g ¥98)
幅があるのは、包丁が狙ったところに落ちないからです。一本の焼き上がりは 1,080〜1,320g です。
数字は、切ってみるまで決まりません。
狙いから外れても、切り直して合わせることはしません。合わせたぶんは売れ残りますし、二度目の包丁は正直になるわけではなく、見た目がよくなるだけです。
秤の目量は 5g です。283g のパンは 285g と表示されます。細かいところで数字が動かないのは、動かないからではなく見えないからです。
この幅は、2026年6月から2026年8月までの記録から出しています。約束では ありません(下の「秤のこと」)。
品書き
値段の書いていない品書き、七品
重いものから順に並べてあります。値段順でも、よく売れる順でもありません。列にあるのは 100g あたりの単価と、一本の焼き上がりの幅だけです ── 一つあたりの値段は、この頁のどこにも書いてありません。いちばん下のバゲットだけが例外で、そこだけ値段が決まっています。
| 品 | 売りかた | 100g | 一本の焼き上がり | 四半分にすると | 特定原材料等 |
|---|---|---|---|---|---|
カンパーニュ この店でいちばん大きいパンです。一本が 1kg を超えるので、まるごと買われる方はほとんどいません。 お渡しの日を入れて4日(切り口を下にして室温) | 量り売り | ¥98 | 1,080〜1,320g | 250〜355g¥245〜¥347 | 小麦小麦粉(国内製造)、ライ麦粉、食塩、パン酵母添加物:使用していません |
ライ麦のパン(60%) 重いので、見た目より薄い厚みで 200g を超えます。はじめての方は、いちど薄めに切ってお試しください。 お渡しの日を入れて5日(切り口を下にして室温) | 量り売り | ¥118 | 900〜1,060g | 205〜285g¥241〜¥336 | 小麦ライ麦粉(国内製造)、小麦粉、ライサワー種、食塩、パン酵母添加物:使用していません |
全粒粉のパン 水を多く入れているので、同じ大きさに切っても日によって重さが変わります。 お渡しの日を入れて4日(切り口を下にして室温) | 量り売り | ¥112 | 820〜960g | 190〜260g¥212〜¥291 | 小麦小麦全粒粉(国内製造)、小麦粉、食塩、パン酵母添加物:使用していません |
山型のパン 形はいわゆる食パンですが、うちでは斤で呼びません(下の「斤のこと」がその話です)。厚みでのご注文も承ります ── そのときも秤に載せます。 お渡しの日を入れて3日(切り口を下にして室温) | 量り売り | ¥96 | 740〜880g | 170〜240g¥163〜¥230 | 小麦・乳小麦粉(国内製造)、牛乳、バター、砂糖、食塩、パン酵母添加物:使用していません |
くるみとレーズン この品だけは別の台と別の包丁で切ります。それでも「入っていません」とは申し上げられません(下の「刃物のこと」)。 お渡しの日を入れて4日(切り口を下にして室温) | 量り売り | ¥152 | 640〜760g | 145〜205g¥220〜¥311 | 小麦・くるみ小麦粉(国内製造)、レーズン、くるみ、ライ麦粉、食塩、パン酵母添加物:使用していません |
じゃがいものパン 水分が多いぶん、いちばん早く傷みます。三日目には固くなります。 お渡しの日を入れて2日(切り口を下にして室温) | 量り売り | ¥124 | 560〜680g | 130〜185g¥161〜¥229 | 小麦・乳小麦粉(国内製造)、じゃがいも、牛乳、バター、食塩、パン酵母添加物:使用していません |
バゲット この店で唯一、値段の決まっている品です。切りません ── 穴が大きいので、切ると家に着くまでに乾きます。そのかわり、重さのほうが日によって 50g ほど動きます。 お渡しの日のうちに | 一本売り | ¥340/一本 | 270〜320g | 切りません | 小麦小麦粉(国内製造)、食塩、パン酵母添加物:使用していません |
同一の売り場・同一の器具で、くるみを含むパンを切っています。記載のない品について「入っていません」という意味ではありません。
切り口
何人で、何日で食べきるか
上の秤とは反対の向きの装置です。あちらは「何グラムと言うか」から始まりましたが、こちらは「どれだけ要るか」から始まって、何グラムと言えばよいかを出します。そしてその数字を上へ持っていくと、そのとおりには切れない、と答えが返ります ── 二つの装置は、わざと食い違うように作ってあります。
何人で、何日で食べきるかを決めてください。一人一食 70g で数えます。出てくるのは「何グラム要るか」で、それを上の秤に持っていくと、そのとおりにはならない、と言われます。それでかまいません。
端数は少ないほうへ寄せてあります。多いほうへ寄せて出す装置は、店の側にしか都合がよくありません。
2人 × 3日 × 朝だけ ── 一人 一食 70g で
420g
カンパーニュは一本 1,080〜1,320g なので、およそ一本の 0.32〜0.39 にあたります。ここも幅なのは、 一本の重さが日によって動くからです。
二度に分けて切ることをおすすめします。
きょう 280g、2日後にもういちど 140g。
二日ぶんより多くなるときは、二度に分けて切ることをおすすめします。切ったパンは切り口から乾くので、一度に切っても二度に分けても、焼いた日は同じです。
この 420g を、上の「秤」に持って いってください。そのとおりには切れない、と答えが返ります。それで かまいません ── 決められるのは、どれだけ欲しいかまでです。
足りなければ、あしたも切ります。切り口は、切った日からしか乾きません。
動くほう
値段と量、どちらかは必ず動きます
量り売りが誠実で、定価が不誠実だ、という話ではありません。値段と量のどちらかは必ず動きます。止めたほうの裏で、もう片方が動いているだけです。
定価で売る
値段を止める/量が動く
同じ 340円のバゲットが、日によって 270g だったり 320g だったりします。うちのバゲットもそうです ── 一本の重さは 50g ほど動きます。値段が同じなので、動いていることに気づきにくいだけです。
量り売り
量を止める/値段が動く
300g とおっしゃった日に 285g だったなら、そのぶん安くなります。324g だったなら、そのぶん高くなります。動いているのが値段なので、動いていることが毎回はっきり見えます。
うちは値段のほうを動かすことにしました。理由は誠実さではなく、包丁のほうが窯より不正確だからです。動くほうを、見えるところに置いてあります。
秤のこと
国が正しさを見ているのは、パンではありません
量り売りの店で国が見ているのは、パンではありません。秤です。取引に使う秤は検定に合格したものでなければならず、二年に一度、外から検査が来ます。中身のほうには、それに当たるものがありません。
- ひょう量
- 15,000g(15kg)
- 目量
- 5g
- 検定
- 2024年(検定証印は秤の側面にあります)
- 定期検査
- 2年に一度・東京都計量検定所
- 次の検査
- 2027年10月
- 01密封して重さを表示して売る商品には、政令が「量目公差」── 許される誤差 ── を決めています。二十九品目あります。
- 02菓子類は、その二十九品目に入っています。パンは入っていません。
- 03そのうえ、政令がかかるのは密封して売るときです。うちは密封しません。
- 04つまり、うちが切ったパンの重さについて、国は二重に何も決めていないことになります。
うちは焼き菓子を置いていません。置けば、そちらは二十九品目のうちです。
以下は公差ではありません。守ると約束できる幅でもありません。2026年6月から2026年8月までに「何グラムください」と言われた412回について、秤に出た数字を控えただけの記録です。
- 九割が、おっしゃった重さの前後 8% の中に入りました。
- いちばん外れたのは 14% 少なかった回です。
- この幅の外に出た回も、二十回に一回あります。次がその一回でないとは申し上げられません。
記録:2026年6月〜2026年8月/412 回
斤のこと
使わない単位
この店の山型のパンを、うちは「一斤」と呼びません。形はいわゆる食パンですが、呼び名のほうを使わないことにしています。
取引に使える単位ではないから
計量法は、取引や証明に使える計量単位を決めています。グラムとキログラムはそこに入っていて、尺貫法の斤は入っていません。うちは重さで値段を出すので、そもそも使えません。
よその「1斤」は、単位ではなく呼び名だから
袋入りの食パンに「1斤」と書けるのは、それを計量単位としてではなく規格の呼び名として使い、重さを別に示しているからです。包装食パンの表示に関する公正競争規約で、1斤は 340g 以上と決められています。
その規約は、袋に入れた食パンの規約だから
340g 以上という下限は、包装された食パンについての取り決めです。袋に入れない店には、その下限すら及びません。うちが名乗ってよい斤の重さを決めているものは、どこにもありません。
そして 340g は「以上」であって「ちょうど」ではありません。上限は決まっていません。うちの山型は 740g から 880g までのあいだで焼き上がりますが、これを「二斤」と呼んで売れば、680g の日も 880g の日も同じ一言で済んでしまいます。呼び名は、幅を隠します。うちは幅のほうを売っているので、隠す道具が要りません。
刃物のこと
交差接触は、お客さまの目の前で起きます
この店の交差接触は、厨房の中では起きません。売り場で、うちの包丁で、お客さまの目の前で起きます。
- くるみとレーズンのパンだけは、別の台と別の包丁で切ります。
- ほかの品は、同じ包丁と同じまな板で切ります。切るたびに拭きますが、洗いません ── 水が残ったところにパンが触れると、そこから傷みます。
- 外皮の粉と打ち粉は、売り場の空気の中にあります。拭いても消えません。
- ですから、くるみのアレルギーのある方に「入っていません」とは申し上げられません。台と包丁を分けているのは量を減らすためであって、無くすためではありません。
同一の売り場・同一の器具で、くるみを含むパンを切っています。
特定原材料は八品目です(えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生)。品書きに記載のない品に ついて「入っていません」という意味ではありません。
店のきまり
先に申し上げておくこと
レジで初めて申し上げると困る類のことを、先に置いておきます。半分は値段の出しかたの話で、半分はお断りです。
きまり
- 値段は 100g いくらで掲示します
- 掲示している単価は税込です。お会計は「秤に表示された重さ × 単価」で、1円未満は切り捨てます。一つあたりの値段は、どこにも掲示していません。
- 秤はお客さま側にも数字が出ます
- 両側に表示のある秤を使っています。うちの側だけで読んだ数字でお会計はしません。読み上げますので、違っていたら言ってください。
- 予算でおっしゃっていただけます
- 「¥500くらいで」で承ります。そのときは超えないよう、必ず少なめに切ります。多めに切って、超えたぶんを黙って足すことはしません。
- 端も同じ単価です
- 一本の終わりの、耳ばかりのところも同じ単価で売ります。安くしません ── 端を安くすると、真ん中が高かったことになります。
- 袋に刷る表示はありません
- 対面でその場で紙に包むだけなので、袋に印刷する表示は作っていません。原材料とアレルギーの品目は、棚の札と、この頁の品書きに同じことを書いてあります。
できないこと
- 切り直しはできません
- 狙いから外れても、切り足したり切り直したりして数字を合わせることはしません。合わせたぶんが売れ残ります。
- 「約○g」とは書きません
- 「1カット約300g」と書けば選びやすくなりますが、そう書いた時点で幅が見えなくなります。書いて得をするのは店だけです。
- 切ったパンのお取り置き・ご予約はできません
- 切り口は切った時刻から乾きます。取り置きは、乾いたものをお渡しする約束になります。まるごと一本のお取り置きは承ります。
- バゲットは切りません
- 穴が大きいので、切ると家に着くまでに乾きます。この一品だけは一本のまま、決まった値段でお売りします。
- 前の日に切ったパンは売りません
- 値引きもしません。切った日に売り切れるぶんだけ切っています。
いただいたお話
300gと言ったのに285gだった、と言われたことがあります。そのとおりで、そのぶん安くお渡ししました。合わせて切り直すこともできますが、そうすると外れた15gが売れ残ります。
土曜の昼
予算でお願いすると必ず少なめに切られる、と気づかれた方がいます。そのとおりです。超えないようにするには、そちらへ外すしかありません。
常連の方
バゲットが先週より小さい、とお叱りを受けたことがあります。測ったら 274g で、先週は 318g でした。値段が同じなので、こちらは黙っていたことになります。それ以来、重さの幅を品書きに書いています。
金曜の夕方
秤の前
二人でやっています。顔写真は載せていません ── 架空の店ですので、実在の方の顔をこの名前と経歴に貼らないためです。 印は分銅です。
髙梨 実
たかなし みのる
焼く
大きいパンだけを焼くと決めたのは、切って売るためです。小さく焼けば切らずに済みますが、そうすると重さが窯で決まってしまい、こちらで加減できるところが無くなります。
瀬川 縁
せがわ ゆかり
切る・秤の前
四年やっていますが、いまだに狙ったところには落ちません。落ちるようになったと思った月に記録を取り直したら、前の年と同じ幅でした。だから幅のほうを掲示することにしました。
ご来店
何も載っていない秤に戻ります
ご予約は要りません。棚にあるものを、いらした順に切ってお売りします。秤は東京都計量検定所の定期検査を2年に一度受けていて、検査済の票は秤の横に貼ってあります。
ご予約は要りません
そのままお越しください。まるごと一本のお取り置きだけ、前日までにお電話で承ります。
まとめてのご注文
十本以上は三日前までにお願いします。売り場のぶんから取らずに、余分に焼きます。
のし・包装はありません
紙に包んで、その上に品名と重さと値段を書いた札を貼るだけです。贈りものには向きません。
- 火〜土
- 8:00 – 18:00
- 日・月
- 定休
大きいパンは朝のうちに焼き上がります